解説
ニューヨークの刑事が日本でヤクザと対峙する、クライム・アクション巨編。監督のリドリー・スコット、そしてカメラマンのヤン・デ・ボンによって描かれるダークで幻想的な大阪の街が強烈なインパクトを与える。日本では、高倉健や若山富三郎など、邦画を代表する俳優たちが共演したことでも話題となった。また本作は、ヤクザの佐藤を演じ、89年11月に他界した松田優作の遺作でもある。自身の末期を覚悟した個性派俳優の、真に鬼気迫る演技が、観る者を圧倒せずにおかない。
物語
ニューヨーク市警のニック(ダグラス)は、横領の疑いをかけられるなか、同僚のチャーリー(ガルシア)とともに、あるヤクザを逮捕する。ふたりはそのヤクザ、佐藤(松田優作)を日本へと護送することになる。大阪の空港へと到着したふたりは、警官に佐藤の身柄を引き渡すが、それは佐藤の一味の変装であった。責任を感じたふたりは、その後の大阪府警の捜査に強引に加わろうとする。だが府警はそれを許さず、ふたりは松本警部補(高倉健)の監視下に置かれることになる。
こぼれ話
本作は当初『ロボコップ』('87年)のポール・バーホーベンが監督を担当する予定で署名までしていた。また、佐藤役はまず『海と毒薬』('86年)主演で注目された奧田瑛二に打診されたが、『千利休 本覺坊遺文』('89年)の撮影と重なったため奧田は断った。その結果オーディションが行われ、松田優作のほか、荻原健一、根津甚八、萩原流行などが参加している。松田はそのオーディションで迫真の演技を見せ、見事に役を射止める。そして松田の強烈な個性を反映してか、撮影中に幾度も脚本が書き直されて佐藤の絶対悪度が増し、主役すら食いかねないあのキャラクターが造形されていった。