解説
1961年度のピューリッツァー賞を受賞し、全米で900万部を売り上げた、ハーパー・リーの小説が原作。人種的偏見が根強く残るアメリカ南部。白人女性への暴行事件で、容疑者の黒人青年を担当する弁護士とその家族を描く。グレゴリー・ペック主演で1962年に公開された同作は大ヒットを記録。アカデミー賞で主演男優賞、脚色賞、美術賞(白黒部門)の3部門を受賞した。2003年アメリカ映画協会が選んだアメリカ映画100年のヒーローベスト100で本作品の主人公アティカスが1位に選ばれた。
物語
世界恐慌の波が襲った1932年、アメリカ南部のアラバマ州。妻を亡くした弁護士、アティカス・フィンチ(G・ペック)は、幼い息子ジェムと娘のスカウトと共に、静かだが幸福な日々を送っていた。そんなアティカスに地方判事から、白人女性への暴行事件で訴えられた黒人青年・トムの弁護を依頼される。人種偏見が根強い町の人々は、黒人側に付くというアティカスや子供たちに冷たく当たるようになる。だが彼は不正と偏見を嫌い、何よりも正義を重んじ、トムの弁護を引き受ける。
こぼれ話
原作はH・リーの自伝的小説で、成長した彼女(アティカスの娘であるスカウト)の回想で物語が進められる。本作の撮影を見学したリーは、アティカスを演じるG・ペックを見て、彼の体型までが父にそっくりであることに感激し、涙を流したという。そしてリーは、ペックに父の形見である時計を送った。法廷のシーンで彼が身に着けているのはその時計である。G・ペックは後に、「オスカー俳優であるよりも、この時計の持ち主であることが誇らしい」と語っている。