解説
松本清張の原作を壮大なスケールで描く野村芳太郎監督による社会派サスペンス巨篇。事件の解明が日本の四季折々の風景と交響曲「宿命」の演奏を織り交ぜながら描かれ、逃れられない父子の宿命を観客の心情に訴えかけるクライマックスは圧巻。いぶし銀の名優たちが随所に登場し映画に深みを持たせている。
物語
ある日、操車場内で身元不明の男の死体が発見された。事件を担当した2人の刑事――今西(丹波哲郎)と吉村(森田健作)は聞き込みの結果、事件前夜に被害者が一緒に酒を飲んでいた若い男の存在を知る。2人が話していた東北なまりの「カメダ」を手がかりに男を探すが、足取りは掴めないでいた。犯人は誰なのか?ようやく被害者の身元が分かり、捜査が動き出す。
こぼれ話
脚本担当の橋本忍と山田洋次は執筆にあたり、各地を旅する親子のエピソードを積み上げて物語の核である宿命をあぶりだした。原作の「この旅は親子2人にしか分からない」と説明される僅か数行の、描かれない描写に着目したのだ。松本清張は映画版「砂の器」に於いてクライマックスの構成を「小説では表現できない」と語り、自身の原作映画の中でも1番良いと絶賛した。