解説
ボワロー=ナルスジャックによる原作を、サスペンスやフィルム・ノワールの監督として著名なアンリ=ジョルジュ・クルーゾーが映画化。パリ近郊の寄宿学校で起きた校長の失踪事件とそこに関わる女たちを描く。突出したサスペンス描写に彩られた傑作で、1996年にはシャロン・ストーン主演でリメイクされたほか、日本でもドラマ化されている。
物語
パリ近郊の寄宿学校で、校長のミシェル(P・ムーリス)の失踪事件が起こる。だがこれは、彼の妻クリスティナ(V・クルーゾー)と、ミシェルの愛人でもあった女教師ニコル(S・シニョレ)による計画殺人だった。郊外のアパートで殺されたミシェルの死体はトランクに入れて運ばれ、寄宿学校のプールに沈められた。死体が誰かに発見されれば事故として処理される計画だ。だが、数日が経っても発見されないことにクリスティナは焦りだす。業を煮やした彼女は、学校側にプールの水を抜くよう指示を出すが、プールの底からは死体が消えていた…!
こぼれ話
本作は、作中で「作品の内容は他言無用」と断り書きが提示された最初の映画といわれる。ボワロー=ナルスジャックによる原作小説の映画化権は、A・ヒッチコック監督も狙っていたといい、タッチの差でクルーゾー監督が入手した。ヒッチコック監督は非常に悔しがったという。また、本作を公開当初に観た作家の谷崎潤一郎は、S・シニョレの怪演に深い感銘を受けたといい、自伝的短編「過酸化マンガン水の夢」のなかで映画のあらすじを微に入り細を穿ちつつ紹介している。