解説
第13回太宰治賞を受賞した宮本輝の処女作を映画化した、小栗康平監督のデビュー作。少年少女たちのひと夏の出会いと別れを軸に、社会の底辺で生きる人々の姿を描いたヒューマンドラマ。1981年度の日本アカデミー賞では最優秀監督賞と最優秀撮影賞を受賞。ブルーリボン賞最優秀作品賞にも輝いた。モスクワ映画祭銀賞受賞や、米国アカデミー賞外国語映画部門ノミネートなど、国外での評価も高い。
物語
高度成長期を迎えつつあった昭和31年の夏、大阪・安治川の河口。川べりに建つ食堂の子ども・信雄(朝原靖貴)は、ある雨の朝、荷車から鉄くずを盗もうとしていた少年・喜一(桜井稔)に出会う。喜一は川の対岸に繋がれたみすぼらしい宿船に、優しい姉・銀子(柴田真生子)と、姿を見せない母・笙子(加賀)と共に暮らしていた。信雄の両親(田村、藤田)は姉弟に優しく接するが、信雄には「夜はあの船には近づくな」という。天神祭りの夜、信雄は喜一と一緒に祭に出かけるが、人ごみで小遣いを落としてしまう。喜一は信雄を慰めようと、自分の住む船に誘う…。
こぼれ話
宿船に住む姉弟の母を演じた加賀まりこは、彼女の友人で本作の脚本を担当した重森孝子が「とにかく声がいいから」との推薦でキャスティングされた。だがスケジュールや製作費の都合上、加賀の出演はたった1日のみしか確保できなかった。このため、東宝の撮影所に船を持ち込み撮影を行った。小栗監督は2015年のインタビューで「加賀さんをはじめ優秀なスタッフたちが力をあわせ、(加賀さんの)出演シーンのすべてを6時間で撮ることができました」と語っている。


