解説
大スタア長谷川一夫300本記念作品。長谷川は復讐を誓う女形・雪之丞と侠盗・闇太郎の二役を力演した。これまで幾度も映画化・舞台化された三上於菟吉による原作を、本作が初の時代劇となる市川崑が監督。光と闇のコントラストが美しい、スタイリッシュで華麗な映像美を演出した。芥川也寸志によるジャズ調の音楽が斬新な時代劇を盛り上げ、山本富士子、若尾文子、勝新太郎、市川雷蔵など大映のオールスタアが勢ぞろいして華を添える。
物語
女形・雪之丞(長谷川)は公演中、桟敷にある男を見た。元長崎奉行・土部三斉。奴こそが、雪之丞の父親を陥れ自害に追い込んだ憎き仇だった。三斉の娘・浪路(若尾)からの熱い視線を感じた雪之丞は彼女を利用して復讐を果たそうとする。しかし、将軍側室の身でありながら一途に想いをぶつける浪路のいたいけな姿に雪之丞は心を痛める。それでも復讐の炎は燃え盛るばかり。江戸を舞台に雪之丞の復讐劇が始まる――。
こぼれ話
これまでに『雪之丞変化』のタイトルで公開された映画は6作品あり、長谷川一夫はそのうち2作品で主演している。最初の1935~36年版(3部作)のとき長谷川は27歳で、松竹の大スタアとして絶頂期にあった(当時は林長二郎名義)。その後長谷川は松竹から東宝を経て大映の看板俳優となり、本作(’63年版)でふたたび主役を演じたのち、同年中に映画界から引退した。また、本作は映画プロデューサーのS・J・シュナイダーによる「死ぬまでに観たい映画1001本」のうちの1本に選出されている。