モノクロームの素晴らしさ そしてこの映画を支えるもの - 「七人の侍」

  • 1. モノクロームの素晴らしさ そしてこの映画を支えるもの
    名前:大抵の映画は寝てしまう人 投稿日:2018/05/31 14:55:31
  • 「七人の侍」は父が好きだったので、小さい頃から何度も観てきました。20年ほど前の上映の時も観ました。素晴らしい作品であることは十分理解し、感動もしてきました。と同時に白黒映画、古い映画というイメージはどうしても拭えませんでした。
    しかし、この4Kデジタルリマスター版に関しては別物でした。衝撃以外の何者でもありません。古さを全く感じさせません。
    それどころか、モノクロ映画の新作と言われたら、完全になんの迷いもなく信じ込んでしまうレベルです。
    それほど十分な驚きと映画を観る喜びをこの4Kデジタルリマスター版は与えてくれると思います。
    そして前回の上映で見た時、初めてこの作品の深い意味を、そして凄みを「感じ取る」ことができました。

    以下、ネタバレです。初めての方はご遠慮いただければと・・・。

    最後の最後のシーン。倒れる菊千代の真っ白なお尻から太ももにかけて流れる黒ずんだ雨。
    ほんの少し前まで生きて、暴れまわり、叫び、農民を守るために体をはって動き続けた人がそこに倒れている。今は、息をせずに倒れている。
    もうこの人は動かないんだ。
    声を出さないんだ。笑わないんだ。文句も、涙も見せることはないんだ。
    この人は、雨の中、前向きに泥水の中に頭から突っ伏したまま、もう動かないんだ。
    野党たちは、種子島は、なんてことをしたんだ。今、命が失われた。体温が失せて行く。彼の体から体温が失われて行くのがわかる・・・。
    この4Kリマスターは、最も美しいモノクロームの世界の中にそんな感覚をはっきりと伝えてくれます。

    撮影時は真冬だったそうです。降り注ぐ雨には、臨場感を与えるために墨を混ぜた水が使われたそうです。
    しぶきを上げながら泥沼の中に崩れ落ちる久蔵。真冬なのに、なんの迷いもためらいもなく泥水の中に体を崩し落とす宮口精二氏。
    渾身の力で投げ出される愛刀。それを追う雨つぶて。今まで、剣豪がなぜその命である刀を最後の最後に投げ出してしまうのか分かりませんでした。しかし、あの瞬間の鮮明かつ繊細な宮口氏の動きを見て、初めてその意味が分かったような気がしました。
    怒りです。その日、その時まで、ただひたすら修練を重ねた剣、つまり「心」を、いとも簡単に打ち崩す「心なき」人でも簡単に扱える種子島という文明が生み出した凶器への怒りです。
    人を切るためではなく、己の心を育て、磨き上げ、剣を有するものとして人の命を守り抜くというただ一つの決意を果たすがための修練。それがために久蔵は七人の侍の一人として村に向かった。そう理解すると、ふっと全てが分かった気がしました。
    それをいとも簡単に打ち崩してしまう種子島という文明が生み出した凶器への怒りと悔しさ。あの鮮明な水しぶきを見た瞬間、うまく言えないのですが、そんな気がいたしました。
    真冬だろうが、氷のような水だろうが、埃だろうがなんだろうが、それらをものともせずに演技を続ける方々。あらゆる瞬間を全力で写し止めようとするスタッフの方々。それを支える裏方の方達。
    そして、途中までの試写を見たのちに予算というものの概念を捨て覚悟を決めた東宝の役員の方たち。全ての人たちの決意のもとに作られた作品が、鮮明かつ繊細なモノラルの世界に展開されていきます。

    この作品を支えるものは、その感動は、もしかしたら人が何かを産み出す時に、全身を貫くあの絶望的な痛みを超えようとする「決意」なのかもしれないと、最近思う次第です。
  • 2. 何度観ても見どころが尽きない映画です。
    名前:おっとさん 投稿日:2018/06/10 17:48:29
  • 登場人物それぞれの登場シーンが自然で巧みだった。
    百姓たちが宿場町で侍を探すなかで、人質をとった盗人を通りすがりの侍が倒す場面に出くわす。この騒ぎの展開のなか、関心を寄せる群衆のうちの一人として、主要人物のうちの二人がその性格を表現しながら少しずつ登場する。あくまでも勘兵衛の活躍を見る群衆の一人として登場させているところが素敵だった。
    この場面の勝四郎と菊千代のそれぞれの表情の変化にとてもワクワクした。

    最初に心をうたれたのは、勘兵衛が百姓の依頼を受け入れるところ。「この飯、疎かに食わんぞ」という勘兵衛の言葉の直前に発せられる人夫の台詞。前段で百姓を口汚く小馬鹿にしていたが、同じような身分の低い境遇に置かれている者として、百姓の心情を代弁する重要な役割を果たしていた(この場面がとても好きです。お椀に盛った白い飯を食べる時、たまにこのシーンを思い出します)。

    4Kでよかったと思うところが、雨中の決戦時に野武士の首領(?)を倒した菊千代が倒れた直後のカットで、尻から脚全体にかかっていた泥が雨粒の一つ一つに流されて、次第に太ももの白い肌が綺麗になっていく様子が、戦いの凄まじさにリアリティを感じさせ、このキャラクターに対する思い入れからくる悔しさと、ああ息絶えた、という感情が思わず湧いて出た。
    久蔵が撃たれた後、倒れる直前に刀を投げたのは、その方角 から弾がきたことを仲間に伝えるためだったのだと思う。自分は息絶えても敵を倒すのだという、最後まで自分を磨き上げた侍としての「気」をあの行動から感じ取ることができた。また、その時の勝四郎のテンションの高い叫びが、更に壮絶感を増して、より感傷的にさせられた。

    音声もこれまで聞き取りにくかった部分の台詞がよくわかるようになっていて、かなり得した気持ちになりました。また観たいです。

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